残すところ、変えるところ。美容室の改装。

以前から付き合いのある鉄工所さんの紹介で、墨田区にある美容室の改装を手がけました。
ご夫婦で長く営まれている、小さな美容室です。
オーナーさんの希望は「お店の雰囲気を変えたい」ということ。
ただ、今回の工事には予算の制約がありました。
オーナーさんの希望をかなえながら、どう工夫して施工するか。
そこが今回の大きな課題でした。
まずは、どこを変えたいのか、何を優先するのか。そこから話を聞いていきました。
全部を新しくする必要はない。
今回、オーナーさんが特に変えたかったのは、お店の外観とトイレでした。
そこで考えたのが、今あるものをできるだけ生かしながら、お店の印象を変えること。
ドアは一度取り外して再塗装。把手(とって)は特注で製作し、取り付け直しました。
窓も、既存の枠を生かして改装しました。
外側は、今ある枠の上から新しい部材をかぶせる「カバー工法」で仕上げ、内側の既存枠は再塗装しています。
今あるものを最大限に生かすことで、廃棄物も減らし、予算内で施工することができました。

もうひとつの希望は、外から店内の様子が見えるようにしたい、ということ。
以前は外から店内が見えにくかったので、ご夫婦が働く様子や、お店の雰囲気が外にも伝わるようにしたかったんですね。 そこで、ドアと窓にはクリアガラスを採用しました。
ガラスの天板を、古い鉄板のように。
トイレも、できるだけ今あるものを生かして改装しました。
なかでも印象に残っているのが、洗面カウンターの天板です。
もともとはガラス製の天板で、オーナーさんはここを変えたかったそうです。「ここは変えたい」と。
だったら、今ある天板を使って、古い鉄板みたいに仕上げてみようか。そんな提案をしました。


この天板は、私が自分で仕上げました。
まず、凹凸をつけるための下地材を塗って、表面に立体感を出します。乾かして磨いたら、今度は黒や赤、オレンジなどの塗料を重ねていく。塗って、乾かして、また磨く。
錆びた鉄のような色や質感になるまで、少しずつ調整しました。
最後はクリア塗装で表面を保護しています。
実際はガラスなのに、触っても鉄板だと思ってしまうような仕上がりになりました。
ただ塗るだけでは、こうはなりません。素材の表情を考えながら、手を動かして仕上げていく仕事です。
鏡や照明、洗面ボウル、水栓などは新しくして、古いものと新しいものを組み合わせました。
小さな場所にも、つくれるものがある。
外観の右側には、小さな窓があります。
もともとあった開口部を生かして、枠をつくり直し、ちょっとしたディスプレイスペースにしました。上にはスポットライトを取り付けて、外からも目が向くようにしています。
ここには小さなサインをつける案もありましたが、今回は見送りました。
でも、サインはあとからでも取り付けられますし、照明の当て方でも見せ方は変えられます。
それから、植物をたくさん飾りたいという希望もありました。
そこで、ステンレスの棚も製作。鉢を並べて、植物を垂らして飾れるようにしました。


窓の枠も棚も、その場所に合わせてつくったものです。
こうした小さな部材にも、普段から付き合いのある工場や、これまでのものづくりの経験が生きています。
残せるものを生かして、つくる。
今回の改装で、お店の雰囲気もずいぶん変わったと思います。
以前から通っているお客様なら、「あれ、こんなに変わったんだ」と驚くんじゃないでしょうか。
こうした改装では、何を残して、何を変えるかが大事になります。
全部を新しくするのではなく、今あるものを生かしながら、必要なところに手を加えていく。
窓の枠を工夫する。ドアを塗り直し、把手を特注でつくる。金属の棚を製作する。今ある天板を、まったく違う素材のように仕上げる。どれも、そのために考えた方法のひとつです。
AMANEでは、こうした店舗の改装工事も手がけてきました。
建物に合わせて部材を考えたり、素材や加工方法を工夫したり。現場で積み重ねてきた経験を、これからのものづくりにも生かしていきたいと思っています。
